SHINYAKOZUKA

ISSUE#9

a glove is a “lighthome” isn’t it?

RUNWAY

「なんで片方だけ手袋が落ちているのだろう?」

落ち葉を掛け布団にしている片手袋

持ち主の手と間違えてポールに刺さっている片手袋

公園やアスファルトの上で泥酔している片手袋

「こちらが会場です。」と案内してくれている片手袋

何がそんなに嬉しいのかピースサインをしている片手袋

自身の帰り道や散歩を思い出すだけでも、これだけ浮かびます。
そんな事を考えている、いつものビール片手の帰り道でも、また片手袋を見つけました。
僕は帰路に着く途中ですが、

「この片手袋は一体どこに帰るのだろう?」

と、そんな事を思いました。
ただ、その日は、そう思っただけで何かあるわけでもなく、
そんな考えはポケットに仕舞って、残りのビールと好きな音楽と一緒に家に帰りました。

季節は過ぎて、マティスの絵を観る機会がありました。
というよりも、観にいく機会を作りました。
マティスやゴッホが、
どんな家を、人を、匂いを、海を、空気を眺めていたのかを知りたくて、
彼等ゆかりの地に、出不精をこれまた、ポケットに仕舞って行ってきました。

マティスの教会の壁画を見惚れていました。
迷い線のない強い一本の線で描かれた絵は、少し心がしんどかった自身の中に迷いなく入ってきました。
「一本で描くものが、これほど心に入ってくるなんて。」
一本、一つ、、片方、、、
片手袋か。
と、いつぞやの記憶と重なってしまい、そんな事思っていました。

手袋・箸・靴・イヤホン・赤ずきんと狼

二つで機能するものは多くあると思います。

ただ、

心や自分自身、家族

といった本当に大切なものは、一つしかない。

仕舞っておいた片手袋が頭の中のポケットからポロッと落ち、
マティスへの惚気と共に、
頭の中のキャンバスに社交ダンスを踊るようにコラージュされていき、
そんな事を想うようになっていました。

「この片手袋は一体どこに帰るのだろう?」
という思いは、

「心や家族という一つしかないものは”帰る場所”だよな。」
と、そう気付くことによって、

「あの片手袋はどこかに帰るのではなく、誰かの帰る”家”なのかもな。」

という想いになりました。

それからは、一つのものや、家や、帰る場所について、
考えたり、調べたり、絵に描いてみたり、音楽を聴いてみたりしました。
最近は、issue毎にプレイリストを作っています。
形容し難い感覚は、音楽だと形容してくれる気がして。
この感覚が導いてくれたのかは、感覚さんに聞いてみないと分からないのですが、
プレイリストを作成中に、Lighthouse(灯台)という言葉が入る曲、またはEPと2つ出会いました。

片手袋は誰かの帰る”家”
そう思っていましたが、
片手袋が一筋の光を月明かりのように、
迷子の考えを照らし、この場所まで導いてくれたので、“灯台”なんじゃないかな。
と、積み木のように考えが重なり、そう想うようになっていきました。

ただ、当たり前の食卓が待っているような、帰れる“家”でもあるし、帰り道を照らしてくれる“灯台”でもあると両方想うので、
タイトルに入れる言葉は、
Lighthouse(灯台)ではなく、少しだけもじらせてもらいました。

こうやって散歩で見かける信号や看板のように、ただの無機質な記号であった片手袋というモチーフは、灯台や家の灯りに照らされて、有機なものへと形を変えていきました。
もちろん、手袋は家でもなければ、灯台でもありません。
ただ、「手袋は手袋だ。」というような直接的な訳よりも、
「手袋は家であり、灯台だ。」という理屈では説明つかないかもしれないけれども、
意味もわからないかもしれないけど、共感性を生むかもしれない、機械には出来ない訳。
そんなデザインがしたいんだ、と気付きました。

そんなデザインがしたいのです。

さらに絵を描き進めると、全て冬の情景でした。
月・冬・家・散歩というモチーフは、
それこそ、理屈では説明できないですが、
昔から自身の根底に変わらずある「基本」なものなのでしょう。
それらの情景を、毎回違うフィルターを通して、
色を変え、濃さを変え、ミルクで割ってみたり、ホイップを乗せたりして、
みなさんのテーブルに提供して、
「こんな情景も美味しいでしょ?」
って、言いたいのでしょう。
今回はそんな基本を、
片手袋という素材に想いを馳せ、混ぜてみて、
ポケットに仕舞い込みすぎて、ぐしゃぐしゃになった
出不精な熱量を引っ張り出して、冬というモチーフと共に、一生懸命温めました。
そして、結論はこんな感じです。

「なんで片方だけ手袋が落ちているのだろう?」

「ただいま。」

「おかえり。」

そんな声が聞こえたら素敵ですよね。

Issue #9
a glove is a “lighthome” isn’t it?
参考資料

・石井公二
‘片手袋研究入門’

・Koji Ishii
‘LOST GLOVE On The Road’

・ウクライナ民話
‘てぶくろ’

・Andreas Samuelsson
‘Houses’

・9月に聞いた石井さんの哲学

・マティスの教会

Issue#9 soundtracks

M1: Lighthouse Melodies (WHALE LIVING)/ Homecomings

M2: Perth (The Lighthouse Project – EP)/ Amiina

M3: 12 & 1 song (12 & 1 SONG)/ Janis Crunch & Haruka Nakamura

M4: For Now I Am Winter (For Now I Am Winter)/ Ólafur Arnalds & Arnór Dan

M5(Secret track): 筆舌 (あにゅー) / RADWIMPS

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA